■アヤカシ回顧録■

■第5回■
作:じんべい、籐太 / イラスト:浮月たく


―1―

 林の奥に、ひっそりと口を広げた小さな祠。

 その最深部に眠る、竜の遺骸──。


 サトリを使って完全体のアヤカシを追った結果、

 まさかこんな場所に辿り着くとは思わなかった。


 私はその日のうちに“彼”を祠へと案内した。

 この遺骸は、人とアヤカシの共生を探るための、道標になる。

 そう、直感したからだ。


「おお! これが竜の力か……素晴らしい!」


 竜の遺骸を見た“彼”は、いつもの冷静な態度からは

 考えられないほど驚き、喜んでくれた。

 その様子を見て私も嬉しくなり、一緒に喜んだ。


 これで、また一つアヤカシ使いの、未来への扉が開いた──。


 そんなことを考えていたから、油断したのだろう。

 このとき私は、竜を見る“彼”の瞳に映る、黒い炎を見逃してしまった。


 それが私、牧原和泉の犯す、最大の過ちになるとは知らずに……



―2―

「あ、あのさ和泉。今、偶然、映画のチケットが手に入ったんだけど……これから一緒に見に行かないか?」


 放課後。

 幼なじみの悠くんが映画に誘ってくれた。

 私は誘われて嬉しかったけど、断った。

 私には使命がある。


「ごめんね悠くん。今日も用事があるの」

「そ、そっか。最近多いな、用事……」


 悠くんが寂しそうに呟いた言葉に、私は苦笑いで答える。


 “彼”に協力するようになって1ヵ月。

 私は今まで通り、放課後を悠くんや陽愛ちゃんと過ごす事が出来なくなった。

 そのおかげで、二人に心配をかけてしまっているが、“彼”への協力を止めるわけにはいかなかった。

 “彼”の謳う、アヤカシと人との共生を実現しなくては、私に未来は無い──。


 幼い頃からアヤカシを使う私の体は、既にボロボロだった。

 五感は老人のように鈍り、特に聴覚は完全に閉ざされている。

 それでも何とか普通の生活が出来るのは、皮肉にも私から聞くことを奪ったサトリの力だ。

 サトリの能力を使い、その人の起こす行動、話したい言葉を先読みしている。


 ずるくて、卑怯で、聞きたくない声まで聞こえてきて……

 本当はこんな力を使うのは嫌だけど、私はアヤカシに頼るしかなかった。

 これが私が生きるための、唯一の手段だから。


「和泉、もし何か困ってることがあるんなら、何でも相談しろよ」

「うん。ありがとう」


 教室を出て行く私に、悠くんが優しく声をかけてくれた。

 サトリを通じて、温かく、せつない思いが伝わってくる。


 これは悠くんが、私に愛を向けてくれた時の感情──。


 この感情を受け取る時、私はいつも複雑な気分になる。

 私も悠くんことが好きだ。

 だから悠くんの愛情は素直に嬉しい。


 けれど、そんな大切な感情がサトリを通じて伝わることが嫌だった。

 こんなこと、アヤカシを通じて知りたくなかったのに……


 早く共生を実現して、サトリを封印したい。

 ……ううん。共生は実現させなきゃいけないんだ。

 共生は私だけの問題じゃない。


 共生は、全てのアヤカシ使いにとって……

 竜の使い手である悠くんにとって、必要なことだから──。



― 3―

 “彼”の屋敷に着いた時から、違和感はあった。


 静か過ぎる。


 いつもなら正門をくぐれば、何人かのアヤカシ使いとすれ違うのに、今日はまるで、屋敷全体が水を打ったかのように静かだった。


 待ち合わせの広間に到着すると、たった一人で私を待つ“彼”がいた。

 いつも傍にいる夜明姉妹の姿さえ見えない。


 不審に思いながらも、私は“彼”の正面に座った。


「わざわざ来てもらってすまないね。今日は君に重要な話があるんだ」

「重要な話、ですか」


 先日発見した、遺骸の事が頭をよぎる。


 私たちは遺骸を見つけた後、今後、遺骸をどうするか話し合っていた。

 その結果、まず“彼”が竜に関しての情報を集めるということで合意した。


 重要な話とは、そのことだろう。


「牧原くん。キミには竜の使い手を捜してもらいたい」

「え……竜の使い手を?」


 予想外の展開に、冷静に話を返すも、頭は混乱していた。


 “彼”が竜の使い手を──悠くんを捜そうとしている。

 何故だ? それが遺骸を見た結論だというのか。


 悠くんの中に竜が眠っていることは、今まで誰にも話した事は無い。

 悠くんには、アヤカシ使いとして覚醒して欲しくなかったからだ。


 それなのに──。


「あの遺骸を見て考えたのだが、竜には化石だけでもあれだけの力がある。それが生きている竜なら、もっと凄い力が出せると思ってね」


 私は後悔した。

 あの遺骸を見つけた時、何故こうなる事を予測しなかったのか。

 興奮して、簡単に話を進めすぎた。


「……遺骸の力だけでは、不十分なんですか?」

「共生には大きな力が必要だ。遺骸と生きた竜、両方あるに越したことはないだろう」


 願いも虚しく、正論を返される。


 共生はアヤカシ使い全体の夢。

 私もその実現のため“彼”に従ってきた。

 可能性があるなら、竜の使い手を捜すのは当然のことだ。


 だけど……それでも、悠くんを巻き込むのには抵抗があった。


 ──竜の力は大き過ぎる。


 以前、強力なアヤカシを覚醒させた使い手が、一瞬にして喰われてしまったのを見たことがある。

 使い手がアヤカシの力を抑えきれなかったのだ。


 竜は他のどのアヤカシよりも強い。

 覚醒すれば、きっと悠くんは竜に喰われてしまう。


 そんなこと……私は耐えられない!


 我侭だとわかっていても、私は何とか逃げ道を探った。


「使い手がアヤカシに耐えられなかったら、どうするんですか?」

「そうだね。確かに竜が覚醒すれば、すぐに完全体になるだろう。しかしそれも計算の内だ。その後の事は私に任せてくれ」

「え……」


 一瞬、聞き間違いかと思った。


「ま、任せるとかそういう話じゃありません!」

「どういう話だ?」


 “彼”が何を言いたいのか、わからないという顔をした。


 本気……なんだろうか?

 この人が今まで何人ものアヤカシ使いを殺してきた事は知っている。

 だけど、殺しは“彼”の中でも最終手段であり、

 最初から相手の事情も考えず、殺すなんて事は今までなかった。


 悠くんのことを抜きにしても、“彼”の考えには賛同できない。


「死ぬとわかっていて覚醒させるなら、私は協力しません。使い手を殺してまで手に入れる共生に、意味があるんですか!?」


 “彼”に目を覚まして欲しくて、私はサトリを使って心から声を飛ばした。

 共生はアヤカシ使いの幸せをもたらすもの。


 いつもそう話してくれたはずだ!


「意味はあるだろう? 君は何を言ってるんだ?」


 愕然とした。

 私の声が、全く届いていない。


 この人は本当に“彼”なのか?

 共生を語り、アヤカシ使い全体の幸せを考えてくれた、あの“彼”なのか?


 信じられなくて、いけないと思いながらもサトリの力を強めた。

 今のままだと話そうとしている内容や、強い感情は拾えても、内に秘めた思いや言葉は読み取れない。


 出来ることならサトリなんて使いたくなかったが、そうも言っていられない状況だった。


「君が何故そこまで竜に肩入れするのか分からないが、サトリなら覚醒前のアヤカシを見つける事が出来る。
 出来れば協力してもらいたいのだがな……」


 “彼”の言葉から漏れた感情は、無色透明。

 思ったことを素直に話している。


 つまり……さっき話したことも、全部本音なんだ。


 失望と寂しさに、全身から力が抜けていく。


「すみませんが、今のあなたには協力できません」

「今の私? 何を言っている。私は昔から何も──」


 言いかけて、“彼”が言葉を詰まらせた。

 同時に感じた、戸惑いと不安の感情。

 ぞわりとした黒い感情が、“彼”の全身を這いずり回る。


 この感じは……まさか!?


「あ、あのっ!」

「き……君の考えはわかった。もういい! 竜は我々だけで捜す!」


 私の話を遮り、怒鳴るように話した。

 “彼”の中で蠢く、黒い感情が膨らんでいく。

 疑問が確信に変わった。


 “彼”は──


「く……何故だ……私が、そんなはずは……ッ」


 喰われている!



― 4―

「和泉、一緒に帰ろうぜ!」

「あ……うん」


 放課後になり、悠くんが帰りを誘ってくれた。

 嬉しかったけど、今は素直に喜べる気分じゃなかった。


 屋敷に行かなくなってから一週間。

 ずっと“彼”のことが気になっている。


「お前さ、最近元気ないよな」

「え? そ、そうかな」


 少し驚く。

 まさか、鈍感な悠くんに指摘されると思わなかった。

 それほどまでに落ち込んでいたのか……


「あー……相談ならいつでも乗るぞ?」

「うん、ありがとう。でも大丈夫、大したことじゃないから」


 本当に大したことでなければ、どんなにいいだろう。

 しかし、アヤカシの件に関しては悠くんに相談するわけにもいかない。


「そっか。じゃあ今日は二人でパーっと遊びに行くか! その……和泉に渡したいモノもあるし」

「えっ?」


 頬を染めて話した悠くんの言葉から、胸が締めつけるほど、せつない感情が伝わってきた。


 これって、もしかして──。


「和泉。いい感じのとこ悪いんだけど、ちょっといい?」

「ひゃあっ!」


 突然背中を叩かれ、驚いて変な声をあげてしまう。

 サトリが発動してる最中に不意をつかれたのは初めてだった。

 後ろを向くと、私の奇声に笑っている夏原さんの姿がある。


 は、恥ずかしい。

 悠くんが変なこと言い出すから……


「い、和泉。オレ、ま、待ってるから! 夜に、千年桜で!」

「あっ、ちょっと待って」


 私の返事も聞かず、悠くんが走り去った。

 相変わらずの早合点。呆れて溜息が出る。


「あらら、告白の邪魔しちゃった?」

「ち、違います。そんなんじゃありません!」


 悪戯っぽく夏原さんが笑う。


 夏原さんは、私が唯一、仲良くなったアヤカシ使い。

 他の人は、私がサトリ使いだと知ると近寄らなくなったが、夏原さんだけは、実際、サトリの力に触れても仲良くしてくれる。


 仲良くなるまでは色々あったが、今では私のお姉さんみたいな存在だ。


「今日はどうしたんですか?」

「うん、ちょっとね。中で話そうか」


 笑顔から一変して、真剣な表情で喫茶店を指差す。

 同時に夏原さんから重苦しい感情が流れてきた。


 どうしたんだろう?

 もしかして“彼”に何かあったのだろうか……



― 5―

 アンティークの柱時計が並ぶ、レトロな雰囲気のお店。

 テーブルにつくと、夏原さんは心を落ち着かせ、濃いめのコーヒーをかき混ぜながら、世間話を始めた。


「ねえ、最近、仕事に来ないみたいだけど、どうしたの?」

「すいません。何だか気が乗らなくて……」


 本当の理由は“彼”が喰われ始めたからなのだが、流石にそんな事は言えないので、適当に誤魔化した。


「気が乗らない、か。まあ、竜の力は相当なものだって聞くからね。実は私も気が乗らないのよねぇ……」


「夏原さんも竜の使い手を捜してるんですか?」

 夏原さんの口ぶりでは、私も竜を捜すことになっている。

 それは誤解なのだが、今はそれより、夏原さんが捜してることが気になった。


「ん、知らなかった? でも竜を捜してるのは私だけじゃないわよ。組織に所属するアヤカシ使いは、全員竜を捜してる」

「全員!?」


 驚いて聞き返すと、夏原さんは冷静に頷いた。


 ……信じられない。

 この前、屋敷に誰もいなかったのは、そのせいなのか?


 私は何故“彼”がそこまで竜にこだわるのか理解できなかった。

 共生のためというのは、口実にすぎない。

 “彼”の中に潜んでいた黒い波動は、そんなこと考えてなかった。

 では、何故竜を必要とするんだろう。


 不安な気持ちが、コーヒーを混ぜる手の動きを早めた。


「あのさ、和泉」


 夏原さんが問いかける。

 同時に、喫茶店に入る前と同じ、重々しい感情が伝わってきた。


「あなたには隠し事できないから素直に話すけど、私がここにいるのは、牧原和泉を監視するためなの」


「え──?」


「疑われてるわよ、“彼”に。竜を隠してるって。私はそんなことないって言ったんだけどね」


 ……私は、動揺した。

 悠くんのことがバレている?


 いや、だとしたら既に悠くんに接触しているはずだ。

 まだ疑われているだけ。しかし、何故?


 頭の中が、ごちゃごちゃになり、暫く言葉が出なかった。

 その異変を夏原さんに気付かれる。


「和泉、あなたまさか──」

「お願いします、“彼”には言わないで下さい!」



― 6―

 夏原さんに、全ての事情を話した。


 竜の遺骸のこと、悠くんのこと、

 そして“彼”が喰われていること──。


 初めはあまりに急な話に、冗談だと思われたが、サトリの力で私の記憶を見せると、信じてくれた。


 だけど、“彼”が喰われていることに関しては、納得してもらえなかった。

 あれは一時的なもので、まだそこまで深刻な事態じゃない。

 一度、“彼”と話したほうがいいと言われた。


 そのことに関しては、わたしも同感だった。

 まだ“彼”は完全にアヤカシに食べられたわけじゃない。

 ちゃんと話をすれば、悠くんの事もわかってくれるかもしれない。

 屋敷へ行って、“彼”と話そう。


 ついて行こうかと言ってくれた夏原さんには、万が一の時を頼み、私は一人で屋敷へ入った。



― 7―

 屋敷の周りには、不審者が入れないようアヤカシの力で結界が張ってある。

 正門まで辿り着くには、“彼”の許可が必要だ。


 つまり、玄関まで入って来れた私は、“彼”の許可を得ているということになる。


 廊下を進み、いつも待ち合わせに使っている広間に入ると、既に“彼”が正座をして待っていた。


 少し、やつれたような印象を受ける。


「久しぶりだね、牧原くん」


 “彼”の声から、強い決意の感情が流れてきた。

 共振するように私の身が引き締まる。


「今日は竜に関する話が聞きたいのかい? それとも……」


 “彼”が一度、大きく深呼吸する。


「私がどれだけオロチに喰われているか、聞きたいのかい?」


 “彼”は全てわかっていた。

 私がここに来ることも、自分がアヤカシに喰われている事も──。


「……1つ、お聞きしたいことがあります。何故私が竜を隠してるって思ったんですか?」

「君の体から匂いがしたらしい。親しい者に竜の使い手がいるな?」

「……」

「答えないか。まあ、当然だろう。今の私は信用できないからね」

「そんな……」


 “彼”が自嘲の笑みを漏らしながら話した。

 心なしか前髪が乱れ、疲れているように見える。

 瞳にも以前のような覇気がない。


 これがあの、いつも自信に満ち溢れ、アヤカシ使いを導いてくれた“彼”なのか。

 アヤカシに喰われるということは、こうも人を変えてしまうのか。


 寂しさに胸が締め付けられる。

 衝撃のあまり、かける言葉さえ見つからなかった私に“彼”が優しく語り掛けてくれた。


「君が気に病む必要はない。こうなることは覚悟していた。ただ、最後に本物の竜に触れたかったというのはあるがね。
 こう見えても、まだ共生を諦めたわけではないんだ」


 本物の竜……


 悠くんのことを話すべきか迷った。

 今の“彼”は、生きるために竜を求めている。

 竜が、残された最後の希望だった。


 だけど、それは悠くんも同じだ。

 竜が覚醒すればただでは済まない。

 少なくとも、二度と普通の生活に戻れないだろう。


 これはもう……私一人が判断していい問題じゃない。


「竜の使い手と会わせてもらえるなら、何だってしよう。私が信じれないなら、好きなだけ心を覗いてもらっていい」


「……わかりました。そこまで言うなら」


 私は両手を広げ、アヤカシを出現させた。

 つぼみのような姿をしたサトリが、“彼”の頭上で開花するように展開する。


 最後のわだかまり。

 “彼”の中にある、あの黒い感情。

 アヤカシにどこまで浸食されているか、確かめる必要がある。


 私は意識を集中させる。


 ゆっくりと、砂に沈むようにサトリが“彼”の心へ落ちていく……



― 8―

 “彼”の心は、まるで子供のように純粋な透明だった。

 いつまでも信念を貫く“彼”らしいと、微笑ましく思う。


 少しの新緑。

 これは夜明姉妹や、私たち仲間を思う心。

 “彼”にもこんな優しい一面があるとは驚いた。


 そして……

 理性の炎を覆い被さるように巻く、黒い霧。

 これが全ての元凶。


 アヤカシの侵蝕が、どのくらいの影響を与えるのか、確認するために、そっと霧に触れた……


 その瞬間だった。


「うぅっ!!」


 闇の霧がサトリを囲い込み、染み込んできた。

 さらにサトリを逆流して、私の中にまで入り込んでくる。

 扉をこじ開け、強制的に心を覗き込まれたような感覚。

 まずい! 慌ててサトリを遮断する。

 だが、そのときにはもう遅かった。


「クククッ。なるほど、久坂悠か……この男が竜なのだな」


 サトリを逆用して、私の記憶を吸い上げられた。



― 9―

 「な、何をするんですか!」


 私はサトリをしまいこむと“彼”を睨んだ。

 だが、目の前にいたのは、私の良く知る“彼”ではなく、外見そっくりの別人だった。


「悪いな、牧原和泉。竜は私が貰うぞ」


 この人は誰だ?

 目を見るだけで背筋が凍る。

 “こいつ”は人間じゃない!


 まさか、ここまで喰われていたなんて気付かなかった。

 サトリから逆に記憶を読まれるなんて……


 何も知らずに心を晒してしまった。悠くんが危ない!



― 10―

「ハァッ、ハァッ、ハァッ!」


 気がついたら、夢中で走っていた。

 どこをどう通ったかわからない。


 とにかく、“彼”より先に悠くんに会わなければいけない。


 竹林を風を切る速度で抜ける。

 後ろから迫るアヤカシの気配は二つ。

 戦うことのみに特化したアヤカシ、鬼。

 その使い手たる、夜明姉妹だ。


 どちらも尋常な強さではない。


 悠くん……悠くんッ!!



― 11―

 ……気がつくと、私は桜を背に倒れていた。


「和泉ッ! 目を覚ましてくれよ、和泉ッ!!」


 私の亡骸に、悠くんがしがみ付いて泣いている。


 ごめんね、結局巻き込んじゃった。


 やっぱり、もっと早く話しておけば良かったのかな。


「和泉ッ! いやだ……和泉ぃ!!」


 泣かないで、悠くん。


 私は、まだここにいるから。


 もう一度、あなたに会いに行くから。


 今度は、あなたを守るから。


 すこしだけ、さよならだよ。


 悠くん……また……ね……



― 了―


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